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けたろうさんのことがそれとなくわかるところ
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ひさしぶりに。

〈観察ファイル.005:ナマグサBo’Z〉

僕の向かいに、10代なかばと思しき女の子が座っている。
母親と並んでいたが、平日の昼間に私服でどこへ向かうのだろう。
ところで、少々内気そうな彼女は細かな花柄をあしらった、ひらひらとしたスカートをはいていた。
黒のニーソックスとスカートとで、丸みのある膝からふとももの中腹までを占める若い肌がことさら目に入ってきた。
時折母に話しかけ、話しかけられする度に、白い歯を出してうっすらと笑う横顔が印象的だった。
そんな様子をしばらく眺めながら、僕はキーボードに指を走らせていた。
この独り占め気分はいつまで続くかな、と思っていた矢先、途中駅で黒衣の男が乗ってきた
坊主だった。
彼は僕の隣に腰掛けた。
仏壇もない部屋で暮らす僕には非日常の感触さえする香りを衣にまとわせる彼は、それだけでなんらかの特別な位相の存在に思えた。
坊主の観察をひとしきり終えた僕は、向かいの女の子とディスプレイの上端に視線を戻した。
白い肌は数分前ともちろん変わらず魅力を放っている。
ありがとう。たまにひざをつけたままつま先を動かしてくれてありがとう。そんな風に胸中でつぶやく。
ふと、似た視線が横にもあることに、僕は気づいた。
坊主だった。
さすがに姿勢が良い。背筋はきちんと伸びており、整体に通うゲーム開発者とは大違いだ。
そして強いまなざしを正面のやや下に向けている。
射抜くような鋭さはないが、じりじりと押しやられるような目だ。
そんな目で、少女の膝小僧を見ている。いや、凝視していると言うべきだ。
不意に、少女がの膝が離れスカートの影がももに落ちた。
僕らはイスを座りなおし、坊主は咳払いをした。
そして、坊主は僕の降りる駅より一つ手前で下車していった。
けしからん坊主だった。
もうしばし眺めると、僕もこの親子ともお別れである。
僕はPCをシャットダウンしながら、もう一にらみした。
窓外の流れがゆるやかになり、ドアが開く。
僕は坊主の代わりに小さく手を合わせ、電車を降りた。

〈おしまい〉

○GCS手記
42.9KB。
ちょっと書き進まなくなってきた。

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